読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

宇宙スープ

Once upon a time, the Universe expanded from an extremely dense and hot soup

弱者を生かす戦略ー相模原事件を受けて思ったこと

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

何年か前話題になった知恵袋のベストアンサー。
相模原の事件を受けて、すべての人間が必読だと思うので、この機会に改めて確認してほしい。

アマゾンのジャングルに一人で放置されて生き延びられる現代人はいませんね
ということは、「社会」というものが無い生の自然状態に置かれるなら、人間は全員「弱者」だということです

その「弱者」たちが集まって、出来るだけ多くの「弱者」を生かすようにしたのが人間の生存戦略なんです

”人間は全員「弱者」である”のくだりは、ナウマンゾウを狩っていた時代にはなんの役にも立たなかったであろう自分みたいな人間にとってはかなり勇気づけられるメッセージだった。おそらく文明が少しずつ進化していく過程で、自分みたいな人間も養える体制が整ってきた。社会的に無能な人を受け入れる能力が向上し遺伝子が多様になった結果、数万年の時間を経て自分のような人間もそこそこ活躍できる時代が訪れたと言える。

この事件直後、「障害者は排除されるべき」というまさかの容疑者を擁護するかのような発言がネット上で見られた。彼らの主張は障害の定義があいまいで、論理を欠いていたが、「なぜ排除されるべきか」を突き詰めると、ほとんどは「私たちの生活をおびやかす存在であるから」という結論に至っていた。

一見、本当に「私たちの生活をおびやかす存在」がいるならば、排除されてしかるべきという意見には一理あるとも思える。たとえば、犯罪を生理学的、社会科学的、栄養学的に捉えると、「○○な特徴を持つグループはそうでないグループと比べて○倍殺人や暴力事件を起こす確率が高い」という証拠がいくつも見つかる。

けれども、そういう犯罪の兆候を調べるとむしろ火を見るより明らかに容疑者の特徴にこそ興味深い点がある。「私たちの生活をおびやかす存在」は、この事件の犯人と同様の特徴を示すグループの方かもしれないのだ。そういう意味では、この件の犯人こそ”弱者”の側にまわる。

ごくふつうに見える若者がどういう経緯で戦後史上最大の殺人事件を実行する行動力、決意、殺意を持てたのか個人的に気になったが、「暴力の解剖学」にそのヒントが記されている。

暴力の解剖学: 神経犯罪学への招待

暴力の解剖学: 神経犯罪学への招待

 

ピーター・サトクリフは、1946年6月2日午後10時、ウェスト・ヨークシャー州にあるビングレー産科医院で難産の末に生まれた。担当の医師が、彼の命は1日ともたないだろうと思ったほどだった。当時は、長かった二度目の世界大戦が終わってから1年しか経っておらず、乳児死亡率はきわめて高かった。だがピーターは、体重2.3キログラムのファイターだった。誕生時の障害にもかかわらず、この未熟児は10日間生死の境をさまよったあと退院した。

その後のピーターは、ごく普通の少年として育つ。彼の境遇は私とよく似ている。出産時の合併症を抱えて生まれたこと、イングランド北部の、典型的な労働者階級の家庭で内気な少年時代を過ごしたこと、年齢の割に小さかったこと、カトリックを信奉する大家族に育てられたことなど、私と彼には多くの共通点がある。ピーターは出産時の死の魔手からうまく逃れられたように思われるが、ほんとうにそうなのか?彼は、ビングレー墓地で墓堀人をしていた1967年に人生の転機を迎える。新しい墓を掘り終えてスコップに寄りかかって立っていたときに、エコーのかかったかすかな声を聞いたのだ。その声は、近くにあるポーランド人の墓の十字架から聞こえてきた。サトクリフはのちに、そのときのことを次のように述べている。

「つぶやくような声には奇妙な声があった。私はその声を聞く特権を与えられたのだと感じた。雨が降り始めていた。丘の頂上から谷間を見下ろしながら、何かすばらしいことを経験しているように感じた。谷を見渡し、周囲を見回してから、この世と天国について考え、人間がいかにつまらない存在であるかを悟った。だが、その瞬間、自分は重要な存在だと感じた。私は選ばれたのだと。」

いったい何に選ばれたのだろうか?サトクリフは徐々に、自分が悪行や性的な罪に対する神の怒りの代弁者であると認識し始める。彼の任務は、売春という罪をこの世から一掃することだった。

それは精神病質が表面化するきっかけになる体験だった。ポーランド移民の学校教師と幸福な結婚生活を営んでいたにもかかわらず、それ以後のサトクリフは、まったく別の目的で墓を掘り始める。合併症を抱えて生まれた乳児は、イングランドでは最多数の犠牲者を出した連続殺人犯の一人に変貌したのだ。統合失調症を抱えた殺人鬼となった彼は、ヨークシャー州で13人の売春婦の子宮を切り裂いた。

 この殺人犯は、典型的な統合失調症のダークサイドである。統合失調症の象徴的な症状は妄想で、知的障害に分類される場合もある。の患者はそうでない患者とくらべて、殺人を犯す確率と、自殺する確率が数倍高い。最悪のケースでは、誇大妄想を拡張し、常人では成し得ない衝撃的な殺人を実行することもある。今回の犯人も官邸に手紙を送るなど妄想を拡大した言動が確認されているので、統合失調症の疑いがあると思う。

統合失調症は脳の疾患である。原因は分かっておらず、本人が発症に気付かないケースが多い。しかも、以下Wikipediaにあるように発症したと思われる有名人一覧を見ると、芥川龍之介夏目漱石ニュートン、ナッシュ、ムンクゴッホなどが並ぶ。

統合失調症 - Wikipedia

この面子を見ると、統合失調症の発症しやすさと彼らの功績が無関係とも思えない気がしてくる。つまり、本人たちは苦しんでいるのだろうが、その症状をポジティブなパワーにかえる人たちもいるのだろうということが推測できる。

統合失調症を発症すると脳の構造的異常が起きることが分かっているため、CT/MRI検査などで診断がおこなわれることもあるらしい。けれど自分の予想ではその障害をポジティブなパワーにかえるか、ネガティブなパワーにかえるかまで診断することは不可能ではないかと思う。

ナチススウェーデン、日本がかつておこなっていたように優生学に基づいた排除、差別はどうがんばっても正当化できない。多様性との決別をあらわすからだ。個別の事象を見ればやむをえないケースもあるかもしれないが、少なくとも一般化することはあり得ない。弱者を生かすのがホモ・サピエンスの戦略なので。私たちができることは、「暴力の解剖学」から分かるような圧巻の研究成果の数々をもとに予防に徹するのみだと思う。