宇宙スープ

Once upon a time, the Universe expanded from an extremely dense and hot soup

マラリアと鎌状赤血球症という病気

鎌状赤血球症というかなり興味深い遺伝性の病気がある。

鎌状赤血球症 - Wikipedia

赤血球が鎌型に変形して酸素を運搬できず貧血状態となるのが主な症状だが、遺伝子型によって重症と軽症の2パターンに別れる。

重症パターンでは、常時貧血を発症するので患者は20歳になる前に亡くなってしまうらしい。一方軽症パターンでは、酸素が少ない特殊な状況下でのみ発症するが日常生活は何も問題ないらしい。

マラリア - Wikipedia

マラリアは世界で最もヒトを死に至らしめる感染症の1つである。貧困をもたらす原因の1つとも言われ地域によっては非常に深刻な病気である。
マラリアは蚊が媒介した原虫が赤血球に取り憑いて増殖し、赤血球を破壊して血液中に溶け込み、さらに赤血球に取り憑くというサイクルを繰り返す。

しかし、鎌状赤血球症患者は赤血球型がおかしいためマラリアの感染を受けにくい。その結果、マラリアが猛威をふるう地域では、鎌状赤血球症の”軽症”患者はむしろマラリアの脅威に晒されない分、子孫を残せる確率が高くなるという。

ところが1つ大きな問題があり、”軽症”の鎌状赤血球症遺伝子を持ったカップルの子どもは”重症”の鎌状赤血球症遺伝子を持って産まれる確率が高くなるらしい。

その結果、鎌状赤血球症の遺伝子は耐マラリア機能を保持した遺伝子としてデフォルトでヒト遺伝子に組み込まれるには至らず、”重症”の遺伝子が生まれすぎない程度に、ある一定の水準に保たれる。

この説明を読んだときはめちゃくちゃ驚いた。蚊と人間を行き来して感染力を高めるマラリア原虫の進化もすごいが、それがヒトの遺伝子にも影響を与えるという進化のダイナミズムに。