宇宙スープ

Once upon a time, the Universe expanded from an extremely dense and hot soup

超遺伝子と減数分裂で理解するイーブイ進化の仕組み(1)

ポケモンユーザはご存知のように、イーブイというポケモンが存在する。
イーブイは数あるポケモン種の中でも異彩を放っている。1つの個体が互いに全く特徴の異なる複数の形態に進化する可能性を秘めて生まれてくるのである。

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どうしてそのような芸当が可能なのか?
以下イーブイ進化のメカニズムを解説する*1

一般的なポケモンの進化

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ポケモン進化の説明として最もわかりやすい説明はキャタピーだろう。
幼虫(キャタピー)はサナギ(トランセル)となり、やがて成虫(バタフリー)として飛び立つ。これらの形態変化は1個体の1生涯の間におこなわれる。
このタイプの進化(変態)は馴染み深いが、よく考えると1生涯の間で形態がまったく変わってしまうとは不思議だ。

この仕組みは、「ある遺伝子群が活性するタイミングのずれ」で説明できる。

産まれてから1ヶ月間だけ活性する遺伝子群、その後の3ヶ月間だけ活性する遺伝子群、その後の1ヶ月間だけ活性する遺伝子群...というのがあり、それぞれの期間のはたらきの違いによって外見が変わるということだ。
私たちヒトにおいても、赤ちゃんは良く成長するのに大人は成長が止まるのは、これと同じ仕組みだと言える。

イーブイの進化

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ところがイーブイの進化はそれと訳が違う。

イーブイキャタピーと同じように機が熟すと進化するのだが、あるものは水をまとい、あるものは電気を帯び、あるものは炎をまとうようになる。進化に数種類のパターンがある。そしてこの進化後のパターンの特徴の違いは遺伝子の個人差(個体差)のレベルを逸脱している。
もし、このパターンの違いが”個人差”として説明できるものならば、「皮膚は炎のように赤く、体毛は電流を帯びて逆立ち、尻尾にはみずみずしいヒレがある」のような進化をする個体が一定数いないとおかしい。
しかしふつうに考えれば、燃え盛る炎に耐性のある皮膚は、水中では全く役に立たない。「炎の耐性がある」と「泳ぎが得意」という2つの強みが互いに相反するので、そういう特徴を持った個体は厳しい自然界を生き残ることができず、結果それら遺伝子を次世代に継承することもできない。
つまり、炎をうまく扱える特徴をからだじゅうのすみずみに一貫して持って初めてブースターを形成する遺伝子群は意味を持つのだ。

ところがからだじゅうのすみずみの特徴を決めるためには膨大な遺伝子が必要になる。
でも、たくさんの遺伝子が一貫してこどもに継承されなければいけないのだとすると、たとえばブースターとシャワーズから生まれたこどもはどうなるだろう?
ふつうに考えれば、2者の特徴の中間となる種ができてしまう。

このことをもっとよく理解するために、私たちは遺伝子とはなにか?そして有性生殖を司る減数分裂という仕組みを知らなければならない。

 

*1:厳密にはこれを”進化”とよぶのは誤っている。”進化”とは多数の世代を経て選択される遺伝子が変化していくプロセスを言う。1個体がその生涯を経て形態を変えることは”変態”という。