宇宙スープ

Once upon a time, the Universe expanded from an extremely dense and hot soup

私が金正恩だったら

朝生見てたら、「トランプ大統領の今回の北朝鮮へのやり方に」「賛成」が61%という結果が出ていた。

f:id:metheglin:20170502011930p:plain

youtu.be

現在北朝鮮は核実験を成功させ、核爆弾を推定20個ほど保有しているらしいが、これを長距離弾道ミサイルに搭載して標的を攻撃するという能力までは持っていないらしい。中長距離弾道ミサイルは一度大気圏を出てから落下してくるらしいが、そのとき空気抵抗によりものすごい熱を発するため、弾頭の攻撃能力が失われるという。*1これを避けるためには高度な技術が必要で、その開発に北朝鮮はまだ追いついていない。そのレベルに達するのに早くとも4,5年かかると見られているという。

という背景があるので、「金体制を潰すなら今しかない」という先制攻撃案をとなえる人もいる。冒頭の投票結果、賛成61%という数字が出るのもそういった背景があると思われる。

しかし、本当に北朝鮮を潰すようなことができるのだろうか?
米軍が先制攻撃し、一気に平壌制圧までの戦争を始めたとしよう。
わたしが金正恩となって全力で金体制崩壊の阻止をこころみたい。

 

***

 

どんな奇襲であっても北朝鮮にとっては想定内である。いくつかの攻撃拠点は破壊されるが、速やかに反撃する体制は整っている。ソウルに向けられた大量のミサイルが発射される。同時に朝鮮戦争が再開。ミサイルの応酬が繰り広げられ、陸空で戦火が飛び交う。北朝鮮も大きな被害を受けるが、ソウルは首都機能停止状態に陥る。

一方で、北朝鮮は米空軍から猛攻撃を受ける。
北朝鮮はおそらく空中戦ではアメリカに全く歯が立たない。ゆえになるべくアメリカに的を絞らせず、ミサイル攻撃と同時に分散させて空軍部隊を出動させる。狙いは東京への空襲である。おそらく高確率で全機が東京に辿り着く前に米軍または自衛隊が撃墜するだろう。しかし、ミサイルをすべて迎撃できるかといえば、かなり怪しい。
日本では携帯が警報を鳴らす。空襲警報とミサイル警報である。
はじめの20発のミサイルはすべて迎撃に成功し、そのニュースが日本で大々的に報道され、twitterのタイムラインは異様なテンションとなりナショナリズムが盛り上がる。
しかし、次の20発のミサイルのうち1発が迎撃をのがれ本州内に着弾する。化学兵器や核爆弾搭載ではなかったが、死亡者が出て日本に戦慄が走る。日本のtwitterでは「もしこれが核爆弾だったら...」といった動揺がひろがる。
ところが、北朝鮮にとっては40発に1発しか着弾しないミサイル攻撃ではらちがあかない。そうこうしている間にも北朝鮮は米空軍の猛攻撃を受け、攻撃拠点がどんどん破壊されてゆく。「北朝鮮の降伏も時間の問題だ」と専門家が言い始める。

実は、これら北朝鮮の戦闘機とミサイルによる東京攻撃はどちらもおとりである。本当の狙いは工作員による核攻撃である。実は、ミサイル攻撃・空軍出撃に前後して、漁船に扮した工作員部隊を100船出撃させていたのである。そのうち10船は日本海保安庁に確保または保護されるが、戦闘機およびミサイル攻撃対応に気をとられた日本は90船の工作員部隊の侵入を許す。そのうちの3船が核爆弾を積んでいる。
核を積んだ1つの漁船は、日本海側のなるべくでかい都市、たとえば福岡の港につける。そこで工作員は核のスイッチを押す。(この工作員は死亡するが、北朝鮮内で英雄として扱われ、彼らの家族は生活を保障され、名誉を受ける手はずになっている。)日本はもちろん、世界中に動揺が広がり、連絡網はダウンする。福岡市民は、私の友人知人も含め10%が即死する。

この大厄災に焦ったアメリカはすぐさま金政権との話し合い画策する。事態を重く見た中国が両者を仲介し、北京に会談の席を設ける。ここで金政権はさらに世界を驚かせる。「あと2つ、日本に核爆弾を持った工作員を潜入させている」と。
歴史的大事件となるこの北京条約で、アメリカは北朝鮮の金体制援助を約束するのである。

 

*** 

 

さて、このシミュレーションの北朝鮮はなにがしたかったのだろうか?
それは、「一撃講和」である。旧日本軍が第二次世界大戦で呪われたように固執した終戦にいたるまでの戦略である。自軍にいくら被害をこうむってもよいから、敵に強烈な一撃をくらわす作戦を成功させるのである。相手がひるんだところで講和に持ってゆき、なるべくいい条件で戦争を終結させるのだ。
旧日本軍は一撃講和をやろうとして失敗し続け、だらだらと戦争を長引かせ、多くの戦死者を出すことになった。だが、現在の北朝鮮は旧日本軍と条件が違う。敵対する韓国や日本の本土が目の前にあり、しかも核兵器保有している。したがって一撃講和という戦略がワークする可能性がある。逆にいえば、アメリカが先制攻撃にふみきった場合、北朝鮮は金体制を守るためにこの作戦を成功させるしか道がないため、そこに全力を投入してくる。

工作員による玉砕覚悟の核攻撃は可能だと森本氏も朝生の中で言っている。なのでふつうに考えれば先制攻撃なんてことはできない。
さっきの例では福岡が標的となったが、韓国が核や化学兵器の標的になることははるかにかんたんに推測できる。つまり、「武力制裁に賛成する」というのは、「私は少なくとも韓国は見捨てます」というメッセージに非常に近い。韓国を見捨てておいてアメリカには守ってもらえると信じているのもおかしいし、こういう世論調査結果を出すことが韓国の日本への絶望感をたかめている可能性にもうすこし配慮したほうがいいと思う。