宇宙スープ

Once upon a time, the Universe expanded from an extremely dense and hot soup

知性は脳細胞の数に比例するか?シンギュラリティ論者が見誤っていると思うところ

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「知性は脳細胞の数に比例している。脳細胞は二進法で、ニューロンがくっついたときに微弱な電流が流れるという仕組み。コンピュータもこれと全く同じで、トランジスタがくっつくか離れるか。つまり、1チップの中にあるトランジスタがいつ人間の脳細胞数を超えるかを計算すると答えが出る。ぼくの計算では、2018年に超えるという結果が出た。コンピュータと囲碁や将棋をするのは、はなから諦めたほうがいい」(孫氏)

 シンギュラリティ論者が見誤っていると思うのは、脳細胞の数と知性が比例するというところ。比例してないよね?クジラとヒトの脳を比べればクジラの方がはるかに脳の絶対量は大きいのにどちらがより賢いかと言えば、単純な比較は難しいけど文明を見ればあきらかよね。一般的にも体に対する脳の大きさの”割合”が賢さと関係していると考えられている。

それだけではない。ヒトの脳内だけを見ても脳細胞数が知性と関係しているわけではない証拠が見つかる。脳の部位の中でも最もニューロンの数が多いのが小脳だと言われる。前頭前野に代表される知性の源と言われる大脳よりも小脳のほうがはるかに細胞数は多いのだ。もちろん小脳は知性を司る部位ではなく、はるかに原始的、動作を無意識にスムーズにおこなうなどの機能と考えられている。

  

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

 

 

「意識はいつ生まれるのか」は2015年に読んだ中で一番衝撃的だった本。 ニューロンの数が異なる部位同士の比較や、意識がある/ない状態の脳反応の比較などによって、意識を生み出すものの正体に迫る。
これ読んで、細胞の数ではないのなら何が重要なのか、なんとなくわかった気がする。

数よりも重要なのは、おそらくネットワークである。どういうネットワークかと言うと1つの入力から取得しうる可能性を最大化するようなネットワーク。それを統合情報理論として定量化できるという説を著者は打ち出した。

要するに何億何兆という細胞をどうつなぎ合わせると可能性を最大化できるか、という、天文学的な組み合わせ最適問題を解けるか、ということがテーマになる。

数学に詳しい人なら、コンピュータに演算させれば人間脳超えの最適ネットワークを弾き出せるのが何年先になるか分かるかもしれない。
自分は見当がつかないが、地球全面積5億平方kmの空間を使って、初の生命誕生以来ヒトを生み出すまでに40億年かかっている。そう簡単なことではなさそう。

こういう視点で考えると、コンピュータの処理速度を上げるという発想だけでは拉致があかないと思う。アルゴリズム変革待ちということだ。機械学習はネットワークを最適にする超効率的アルゴリズムであったという点で革命であったと思うけど、依然としてテーマはそこにあり続けると思う。

機会学習にしても学習の過程を経て、入力に対して出力が最適化されるように重み付けが変わっていく。これはつまりネットワークが最適化されていっているのである。決してコンピュータを構成するトランジスタ数が増えているわけではないのに、賢くなっていくわけだ。

ネットワーク最適化という発想が尋常でない可能性を秘めているということはやっぱりヒトの脳を見るとわかる。